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Labo’s View 034 FX-AUDIO- AT-02J

      2020/04/04

『新設計された高精度アッテネーター』

有りそうで無かったタイプのアッテネーターとして大好評のAT-01Jと機能的には同じだが、音質をさらに追求し新たに設計されたという本機「AT-02J」が登場した。音質については、AT-01Jでも十分に使えるものであったが、別に設計した基板と、高精度なパーツを使用しているというが、果たしてどんな仕上がりになっているのだろうか?AT-01Jとの違いや使い分けについてもチェックしたいと思う。

AT-01Jに対して、これも最初から価格からは考えられないレベルの劣化の少ない音がするが、エージングを進めてみると、僅かに滑らかさが増して行く感じだ。24時間程度で十分な感じもあるが、100時間以上のエージングを終えた状態で試聴に入る。
AT-01Jよりも落ち着いた感じのクリアーな全体の音質感があり、その違いは意外と解り易いレベルである。
音場の変化が少なくセンターの定位がよりしっかりとしているので、接続された機器のボリューム位置の変更による変化と相まって、レベル設定を上手く設定すると、音質面での効果が期待出来る。

AT-01Jと本機AT-02Jの音質傾向の差をまとめると、AT-01Jは元気でパワー感があり、AT-02Jは繊細で透明度が高い方向なので、なるべく色づけしたくない場合やクリアーな方向で纏めたい時はAT-02J、少し地味目な音質の機器を少し元気な方向にしたい時などにはAT-01Jという感じだ。
初めて一つだけ買うという「とりあえず」的な場合は、AT-02Jを購入するのが良いだろう。

使い方1 「ボリュームのギャングエラー(左右の音量差)の回避」
アナログボリュームは構造的に僅かなギャングエラーが避けられないが、稀にちょうど使うところに限って気になる事がある。本機を使ってボリュームの位置を移動させる事により、状況を改善する事が出来る。
基本的には-6dBの設定で良いが、たまたまその時のボリュームの位置でもギャングエラーが気になる時は-10dBにしてみるのもアリだ。

使い方2 「ボリュームの使い勝手の改善」
ハイパワーで増幅度の高いアンプの場合に、ちょっと触っただけでも大きな音量変化を起こしてしまい使い勝手が悪い事がある。本機を使ってボリュームの位置を変える事で、滑らかな変化量の位置にする事が出来る。
ライブハウスやコンサートホールで開演前のBGMをCDプレイヤーで流すような場合、PADをONにしても入力感度が絞りきれず、フェーダーが-20dBとか-40dBぐらいのところがあり、スムーズなフェードアウトが難しい事がある。そんな時には本機を使う事で簡単に滑らかなフェードアウトが出来るようになる。設備音響では音量(増幅率)の制限にも使えるのでお勧めである。

使い方3 「入力レベルを下げる事でのヘッドルーム※1ヘッドルーム:機器の最大レベルの余裕量の拡大」
CDプレイヤーが発売されるより前に設計されたプリアンプ、プリメインアンプは基本的にライン入力の最大レベルが2Vで設計されていないので、サチュレーション※2サチュレーション:レベルが大きくて音声が歪む事。激しい歪みは「クリップ」として区別することがあるが発生しやすいが、本機でレベルを下げる事でレベルマッチングをとる事が出来る。

使い方4 「ボリューム全開でボリュームでの音質変化を極力回避」
ボリュームは音質劣化が避けられない素子であるが、音量コントロールをボリュームだけで行っている(=帰還回路の増幅度を変えて音量を変化させていない)機種については、ボリュームを全開にする事でボリューム素子の音質への影響を最小にする事が出来る。
自由なレベルコントロールは出来なくなるが、本機の-20dBポジションでボリュームを上げて行くと意外な変化を楽しむ事が出来る。音量が足りない時は-10dBポジションで行う。
過大な音量にならないようにするため、使い始めは必ずボリュームを絞ったところから上げていって使ってほしい。
音量をボリュームの抵抗値で決める機種と帰還回路の増幅度で決める機種の見分け方は、NFJの取り扱い商品の範囲では入力バッファアンプが付いているかどうかでほぼ判断出来るが、基本的には他社製品の場合を含め、ボリューム回路周りを調べて判断してほしい。
参考までに、代表的な音量をボリュームの抵抗値で決める機種はFX-202J、帰還回路の増幅度で決める機種はFX-2020A+やLP-2020A+である。

使い方5 「パワーアンプ直結」
上記ボリューム全開同様にパワーアンプ直結で使う事で、ボリュームを一度も通さないという使い方も出来る。組み合わせる機器によっては、鮮烈な音になる可能性がある。その場合はDAC等の出力をプレイヤーアプリケーション等でボリュームを下げた状態から上げて行ってほしい。

本機を使う時にはレベルを低下させた部分を短くする為に、短いケーブルを本機の出力側に使うようにしたほうが理論的にはノイズ特性が良い。パワーアンプ直結等の使い方で、スピーカーとパワーアンプを最短距離で接続している時はスピーカーケーブルが短い事を優先して、本機側の配線を延ばして対応したほうが良い場合が多い。モノラルパワーアンプをスピーカーに近づけてセッティングしていてアンプが離れている場合は、本機を2台使ってアンプ側に寄せて使う方法がお勧めである。
AT-01Jと違いLRのチャンネルが交差しない構造になっているので、差し替えて使う時には間違えないように気をつけてほしい。この交差しない構造はクロストークを減らし、チャンネルセパレーションを向上させている部分のひとつだ。

本機のDIPスイッチの並びはAT-01Jと異なっているので、AT-01Jとの入れ替えの際は注意してほしい。このスイッチの並びは左右のチャンネルが極力近づかないように設計しているようで、クロストークを減らし、チャンネルセパレーションを向上させている部分と言える。
設定を変える時は基本的にアンプの電源を落とすかボリュームを絞った状態で行ってほしいが、回路が上手く出来ているのか、音が出る状態のままで変更しても筆者の環境では激しいノイズは出なかったが、なるべく注意していただきたい。

総括
音質変化をより抑えた精度誤差±0.1%以下の高精度金属皮膜抵抗素子での3段階の減衰量を選べるアッテネータは、その高精度パーツと基板アートワークの新設計によって、音質改善や使い勝手の向上に幅広く使え、使い方によっては多いに効果のある便利な一台であった。まず一度使ってみて頂きたい、お勧めの逸品である。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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1. ヘッドルーム:機器の最大レベルの余裕量
2. サチュレーション:レベルが大きくて音声が歪む事。激しい歪みは「クリップ」として区別することがある

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