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Labo’s View 040 FX-AUDIO- PH-01J

      2023/10/12

『素直でスピード感のある音が特長のポタアン』

FX-AUDIO- 初の充電式ポータブルヘッドフォンアンプが発売されている。オペアンプを2個使ったシンプルなポタアンであるが、オペアンプ毎にチャンネルを独立させて、チャンネルセパレーションに気を配った設計になっているという。いつもの茶色ではない真っ白な化粧箱に意気込みを感じる本機はどんな音質に仕上がっているのだろうか。

試聴は入力側にDAC-X6J、FX-04J+、iPhone4S、出力側にはMDR-F1、MDR-7506で行った。
本機は3極のヘッドフォンプラグにのみ対応で、4極には対応していないので、4極のヘッドフォンを使う時には4極→3極の変換ケーブルを準備してほしい。電源ON時のポップ音は大きめの為、ヘッドフォンケーブルを抜いた状態での電源ONをお勧めする。

最初から元気の良いサウンドを聴かせるところは、FX-AUDIO- らしい部分であるが、3回完全放電と充電を繰り返したところの30時間超ぐらいで試聴に入る
全体の印象は解像度高めのハイスピードでキレのある抜けの良い音だ。
周波数方向のエネルギーバランスは超ローインピーダンス16ΩのMDR-F1ではローエンドが僅かに少ない感じもあるが、63ΩのMDR-7506ではローエンドがかなり伸びており、不足は全く感じない。不自然なブースト感の無いフラットな感じである。中域は自然で極フラット、中高域から上は僅かに華やかな感じであるが、全体的にフラット方向でまとめている。
音量方向はダイナミックな実音の立ち上がりで、音質と合わせてヴィヴィッドに音楽を聴かせてくれる。
左右独立のオペアンプが効いているのか、チャンネルセパレーションが良く、左右に振り切りのパンポット※1パンポット:ミキサーに付いているツマミの一つで、左右のレベルバランスを調整する。振り切りのパンポットとは、左右のどちらか一杯にしている状態の事を指すにしている音像に対して、かなり高い解像度をみせるところが、本機の大きな特長のようだ。全体的な音場は再現性が高く、心地よい感じにまとまっている。
音量(アンプの増幅率)は十分に大きく出来る。S/Nも良好で、使うシーンによっては上流側DAP等の音量を下げて使う事も可能である。
以上はGAIN Hの状態である。GAIN Lにすると中高域が少し大人しい印象で、しっとりした感じだ。つなぐヘッドフォンや聴く曲のジャンルによって使い分けるのも面白いだろう。

スマートフォンとの接続には「極短10cmL型 3.5mm-3.5mmステレオミニプラグ オーディオケーブル 高品質ショートケーブル」が音質と使い勝手の両面で好印象であった。


ボリュームツマミは電源スイッチ兼用のタイプである。
充電用のDC-InputはMicroUSB(Micro-B端子)で5Vである。特に商品説明で触れられていないが、PCのUSB端子での充電の途中の電流は120mA程度だったので、殆どの汎用USB充電器やPCで充電可能である。充電用USBケーブルは付属しないので、スマホの付属品や汎用のものを使う事になるが、今や殆どの場合余っているぐらいなので、エコロジーな感じである。
左側のスイッチでアンプの増幅率を変える事が出来る。本機のGAINのL(低)を使う以外に、AT-02Jや01Jを使うのも音質には効果的だ。


本機はオペアンプを交換して、音質変化を楽しむ事が出来る。
LM4562に交換すると、さらにスッキリした音になり、音の粒子が細かい感じになる。リバーブやディレイの切れ際が正確性を増してくる。限定モデルのLM4562ver.はこの状態で売っているという便利なモデルだ。NE5532の音はこれはこれで良くまとまっているので、LM4562ver.を買ってNE5532を載せてみるのも一興だ。
ヘッドフォンとの組み合わせによってはNJM4580DDで少し解像度と重心を落としたマイルドな音にするのも面白い。
変換基板を使ったものは高さが足りないので、OPA627APの2回路DIP変換基板等は残念ながら使えない。
第2ロットから、リチウム充電池がコネクタによる接続で交換が可能になっている。まだ保守部品としての交換用リチウムイオン電池の単体での販売は無いが、予定しているようなので、期待して待ちたいと思う。
リチウムイオン電池についてのTIPSは、Basic Howtoの Basic 005 リチウムイオンバッテリーのTipsを読んでほしい。
ケースを開けた後は全ての保証が効かなくなる為、自己責任の範囲で楽しんでほしい。

総括
本機はFX-AUDIO- らしい、価格を上回る音質に仕上がっている事が確認出来た。スマホ本体に直接ヘッドフォンを接続して聴いている時よりも、スピード感があり解像度が高くレンジの広い音を楽しむめるようになる。左右のセパレーションの良さは本機の大きな特長で、コンパクトな筐体でありががらも、オペアンプの交換も楽しめる本機は、コストパフォーマンスの高さと合わせてお勧め出来る逸品である。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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1. パンポット:ミキサーに付いているツマミの一つで、左右のレベルバランスを調整する。振り切りのパンポットとは、左右のどちらか一杯にしている状態の事を指す

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