Labo’s View 004 FX-AUDIO- PH-A2J
『繊細でクリアなサウンドを聴かせるヘッドフォンアンプ』
出力回路に高品質ヘッドフォンアンプICのTPA6120を使った新製品がリリースされた。同じICを搭載したDAC-X6Jのヘッドフォンアンプ部分との音質的な違いや、PH-A1Jとの違いを中心にレポートする。
使い方はDACのラインアウトから、本機に繋いで、本機からヘッドフォンをドライブするという使い方と、DACの代わりにスマートフォンを直接つなぐ使い方だ。
組み合わせるDACはFX-01JやFX-02J、DAC-SQ5などのヘッドフォン出力が無いモデルにはもちろん、DAC-X6J、X5J、X4J、X3JなどにつなぐとDAC直結との違いを楽しめる。
エージング前は少しザラつく感じがあったが、じっくりエージング(72時間)したところでザラつきもなくなり、本機の実力が見えてきた。
全体的には繊細でクリア感の高い音質、解像度も高く、S/Nが高く、低歪な音である。
周波数方向には極めてフラット感が高い。レベル方向にはスピード感溢れる立ち上がりの良さを感じる。低域は量感を押し付けてくるタイプでは無いが、かなりローエンドまで正確にドライブする。中域〜高域にかけては尖った所がなく、少ししっとりと落ち着いたツヤのある感じの音だ。
解像度はかなり高く、個々の音の粒立ちが良く、その違いを正確に伝えてくるタイプ。実音とリバーブをしっかり描き分けるモニター的気質もある。
音場表現は正確な感じで左右方向には十分広く、セパレーションも良く、前後方向にもかなり表現力がある。
DAC-X6Jのヘッドフォンアンプ部分より少しクリア感があり、立ち上がりの良さがあるように感じた。
PH-A1Jとの比較では、クリア感、フラット感、スピード感、S/Nについては本機、
力強さ、押し出し感についてはA1Jに分が有るように感じたので、聴く曲のジャンルや気分で使い分けるのも良い。
本機はPOWER/MUTEスイッチとGAIN/SELECTスイッチの操作に特徴がある。
まず、AC/DCアダプタを接続した時にはSTATUS LEDが点灯するが、その状態では音は出ない。
左側のPOWER/MUTEスイッチを長押し(2秒)でパワーオンになる。
右側のGAIN/SELECTスイッチを普通(1秒程度)に押すとLINE入力が切り替わる。LINE1がステレオミニ、LINE2がRCAピンになっている。
入力を選んでボリュームを上げると音が出る。
左側のPOWER/MUTEスイッチを普通(1秒程度)に押すとミュートがかかり、音が一時的に出なくなる。もう一度押すとミュートが解除され、音が出るようになる。
ハイインピーダンスヘッドフォンの時などにゲインを上げたい時は、右側のGAIN/SELECTスイッチを長押し(2秒)すると、ゲインが上がる。ボリュームのポジションをずらす事にも使えるので、僅かな音質的な変化としても利用出来る。
電源を落とす時はPOWER/MUTEスイッチを長押し(2秒)する。STATUS LED、LINE LEDともに消灯する。
LINE1とLINE2の間のクロストークが極僅かにあるので、使っていないほうの端子には信号を入れないほうが良い。
改造オプション他
本機はオペアンプを交換して変化を楽しむ事が出来る。
OPA627にすると全体的に押し出し感が上がって、低域の量感が上がり、高域の華やかさが増す。デフォルトのOPA2604が少し大人しく感じた時にはお勧めである。
OPA1622は程よい押し出し感とタイトな低域が心地よくバランスが良い。
NE5532ではかなり力強い低域で全体的にパワー感が上がってPH-A1Jの方向に近づいた感じだ。
保証が効かなくなる為、自己責任の範囲で楽しんでほしい。
リトルスージーをDC-Inputに入れるとしっかりとした変化が感じられる。よりコントラストの高い、音場の広い音を聴かせるようになる。中高域は少しハッキリしすぎてしまう感じがあるので、前段のオペアンプや入力ケーブル、ヘッドフォンのケーブル等とトータルでマッチングをとると良い。
総括
FX-AUDIO-ブランドのヘッドフォンアンプ2号機である本機は、DAC-X6Jで好評だったTPA6120の設計ノウハウを活かした意欲作である。超が付く程のハイコストパフォーマンスであるが、音質はA1Jと違う方向感があり、両方の使い分けが楽しみなラインナップだ。どちらを最初に買うかという質問があるとすれば、クリア&フラット系が好みであれば本機A2J、ファット&パワー系が好みであればA1Jと回答する。また高能率ヘッドフォンでノイズフロアが低い機種を探している場合には本機A2Jをお勧めする。
谷原 寿栄
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