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Labo’s View 011 FX-AUDIO- TUBE-03J

   

『使い方で無限大の可能性を持つ、使い勝手抜群の真空管コントロールプリアンプ』

最初にざっくりとまとめると、TUBE-01Jとのの比較では、TUBE-01Jはピュアに真空管の暖かみを僅かに鏤めるタイプで、TUBE-03Jはアクティブに音をコントロールして好みの音質を積極的に作り出せるタイプという棲み分けが出来ていると思う。

まず真空管装着の儀だが、TUBE-01Jの初期生産モデルより装着し易くなった感じがある。接点改質剤を使うと差し込み易く、音質に良い影響があるところはTUBE-01Jと同様である。
真空管の足の向きはハッキリ分かり、ビギナーでも間違える事なく安心して装着出来るところもTUBE-01Jと同様である。
本機の接続はTUBE-01Jと同様で、パワーアンプの手前、ヘッドフォンアンプの手前、ADコンバータの手前等の既存の配線に割り込ませるイメージで行う。扱える信号レベルは入力、出力ともラインレベルだ。

裏面のDIPスイッチのポジションを確認して、接続確認後、電源を投入する。
ゆっくり1日程度音楽を掛けてエージングすると、TUBE-03J本来の音質感が見えてくる。
100時間ぐらいは様々な小さな変化があり、エージング中の変化を楽しむのも、また一興である。

音質についてであるが、大幅な音場の変化をさせないで、素性の良いクリア系の音づくりはTUBE-01Jに通ずるところがあるが、今回はさらに扱い易く暖かみを音に付加出来るセッティングになっているように感じる。
具体的にはTUBE-01Jがレベルを上げて行くとギリギリまで歪みを出さないで、あるところからしっかりドライブする感じのセッティングであるのに対して、本機TUBE-03Jでは比較的早い段階で倍音が少しづつ付加されている感じがあり、真空管らしい暖かみのある音や、音に太さを追加したい時等に更に使い易いセッティングになっている。入力ソースにもよるが、Gain-LowポジションでVol.10時ぐらいのところまでは、ドライブ感の少ないストレートな音質である。

トーンコントロールは、Bassは積極的なセッティングでターンオーバー周波数がちょっと上めでコンパクトスピーカー等でも効果を感じ易く、変化量はかなりしっかりある。
Trebleはターンオーバー周波数が高めの繊細なセッティングで、音響機器のセッティングに使い易い。変化量は十分あるが、Bassよりは少なく感じる。
Bass/Treble共に振り切りいっぱいまで回しても極端な位相崩れがなく、積極的に使えるところが良い。
TONEのON/OFFで位相が反転する仕様なので、複数台を同時使用する特殊な場合等には位相管理に注意が必要である。
また、もう一つの注意点としては、中点が12時より少し右(12時30分程度)にあるように感じた事を伝えておく。生産ロット等で変わる可能性はあるが。

本機の使いこなしとしては、ボリュームの組み合わせによるセッティングによるところはTUBE-01Jと同じ方法で、基本的には本機のボリュームを下げ目で後ろに接続してあるアンプのボリュームを上げる事でクリーン系、本機のボリュームを上げ目で後ろに接続してあるアンプのボリュームを下げる事でドライブの掛かった音になるが、本機は初段にオペアンプによるバッファー回路がある為、変化の雰囲気が少々異なり、音作りの幅が広がった感じがする。
また、本機のボリュームはNFB※1NFB:負帰還 回路の出力を反転して入力に戻す事で歪みを打ち消し、増幅率の直線性を改善する方法の一つの帰還抵抗値を調整するタイプなので、電源OFFの時には下流に繋がっているパワーアンプを先にOFFにする事を忘れないでほしい。ちなみにTUBE-01Jのボリュームは入力アッテネーターで、このあたりが音質の違いになっている一部分のようにも感じる。

真空管を初めて使う時に気になる動作時の真空管の温度だが、思っていたよりも意外と低く、夏場でも室温が上がるような感じにはならず、極端に密閉されたラック等の環境でなければ、心配なく使える範囲である。

真空管を別売の特級品のミルスペック選別グレードに変えると定位感などが更に良い雰囲気になる。予備としても使えるので、同時購入がベターである。付属品、オプションとも5000時間程度の寿命があるようなので、安心して常時使用出来る。気をつけなければならない点は、脱着時に無理な力を加えて真空度を下げてしまったり、落下させて管を割らない事である。

真空管制震リングは面白いオプションである。真空管の振動によるマイクロフォニック効果を低減させる効果があるとの事だが、音の沈み込みの表現力が上がるように感じられる。色によって素材の硬さが異なるので、それにより効果の表れ方が僅かに違うところも面白いところだ。

本機はバッファー回路とトーンコントロール回路のオペアンプが交換可能であるが、大変変化が大きく、色々なセッティングを楽しめる。
両方にOPA627APを使った時の高級感とバワー感と繊細さが調和した感じは、実に心地よい。
LME49720を使った時には、歪み感が少なく、繊細さが際立つ音質になるのも面白い。
他のオペアンプでも色々楽しめるので、保証が効かなくなるが、自己責任で楽しんで欲しい。

総括

TUBE-01Jは真空管を加えるというオーディオ体験を手頃な価格で予想以上に楽しめる商品であったが、本機TUBE-03JはDIPスイッチの設定により「ピュアオーディオに僅かな真空管の響きをプラスする」という01J的な使い方から「アクティブに音を調整して楽しむ」領域まで楽しめるところが、大変魅力的である。手頃な価格なので、01Jと03Jを使い分ける事や、ハードロック系の曲などには03Jのあとに01Jを重ねて使って強めのドライブ感を楽しむなど、使い方で可能性は無限大だ。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

1968年生まれ 音楽業界で30年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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1. NFB:負帰還 回路の出力を反転して入力に戻す事で歪みを打ち消し、増幅率の直線性を改善する方法の一つ

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