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Labo’s View 038 FX-AUDIO- FX-D05J FX-D06J

      2020/04/04

『意外と便利で意外と効果的なS/PDIF変換DDC』

S/PDIFのOPTICAL→COAXIALとCOAXIAL→OPTICALを変換するDDC※1DDC:デジタルデジタルコンバータ このページではS/PDIFのOPTICALとCOAXIALの間のコンバータを指しているが発売された。FX-D05Jはジッターフィルターのみ、FX-D06Jはジッターフィルター+シグナルスタビライザーを搭載しているという。デジタルオーディオの音質にはジッターが大きく影響しているが、FX-D05JやFX-D06Jを使うと、どんな効果があるのだろうか?音質面への効果や使い方を中心にレポートする。

今回の4機種は、デジタル領域だけの動作なので、エージングは殆ど関係無さそうだが、一応10時間ぐらいのエージングを行って試聴に入った。
試聴はFX-D03J+(USB to S/PDIF DDC)とDAC-X6Jの間に挟む形で行った。
以下はFX-D03J+とDAC-X6JをOPTICAL接続での音質に対しての評価である。
FX-D05J(COAXIAL→OPTICAL)僅かに空間表現力と精度が向上
FX-D06J(COAXIAL→OPTICAL)スピーカーの外側左右方向がクッキリハッキリする。空間の隙間がしっかり表現され、精度はかなり高くなる。全体的な解像度が上がった感じになる。この変化はわかりやすい。
FX-D05J(OPTICAL→COAXIAL)空間表現力と精度が向上。FX-D05J(COAXIAL→OPTICAL)とFX-D06J(COAXIAL→OPTICAL)の間ぐらいの感じだ。
FX-D06J(OPTICAL→COAXIAL)全体の空間表現力が高まり、ボーカルの位置がしっかり表現される。解像度も高く、FX-D06J(COAXIAL→OPTICAL)より効果があるように感じた。
以上は24bit96KHzでの評価だが、24bit192KHzでは、より変化が解り易かった事を記しておく。
(FX-D05Jは24bit96KHzまでの対応であるが、筆者の環境では24bit192KHzの非対応であるビットレートでも問題無く動作した。あくまで参考程度であるが。)
4機種を直列に繋いで、ありえない状況での限界的なテストも行ってみたが、大きな劣化を引き起こす事も無く、安定して伝送される事が確認出来た。その際に光コネクターの先端の加工の出来が良く無いものは伝送エラーを起こす事が解ったので、高いサンプリングレートでリンク出来ない時は、光ケーブルを別のものに変えてみる事をお勧めしたい。
試聴の結果を簡単にまとめると、FX-D05Jは変換器としての性能は十分で、僅かに音質面が改善される、FX-D06Jは更にシグナルスタビライザーの音質面での効果がハッキリある事が判った。



基本的にはDACやDAC内蔵アンプの光入力端子または同軸入力端子が余っている状況で、接続したい機器と合わない時に使うのが一般的な使い方だ。
しかし、FX-D06Jはシグナルスタビライザーの音質面でのわかりやすい効果があるので、音質向上アイテムとして使う事をお勧めしたい。
接続には品質の高いコネクターやケーブルで出来ているものを使ってほしい。


デジタル伝送はデータ(値)が正確に伝送されることがアナログに対しての利点であるが、同期信号をデータと一緒に伝送しているS/PDIFは、この信号のON/OFFがハッキリしなくなると、データの欠損の前にジッター※2ジッター:時間軸の揺らぎが発生して、その結果として音質に悪影響が起こる。悪影響はそのまま時間軸の変調を起こし、ΔΣ変調に対しては振幅誤差を発生させる。その結果、歪みが増え、ΔΣ変調に対してはノイズフロアが上昇する。聴感上は実音の滲み、透明感の低下、音場の広がりや精度が低下するように感じる事が多い。
原因はいろいろとあるのだが大きな原因のひとつは、波形のON/OFFが急峻でなくなった事により受信側のスレッショルド※3スレッショルド:スレッショルドとは状態を変化させるしきい値(閾値)Threshold。スレシホールドとも呼ばれる事がある通過のタイミングが送信時とズレる事である。
対策としては、なるべくONとOFFの間が急峻に変化させる(オシロで見た時に垂直に近くなるようにする)事だ。
このJITTER FILTERの効果検証の図では、その実測データを表しており、その試聴での結果は上記の改善部分が音質に結びついている。
COAXIAL to OPTICAL、OPTICAL to COAXIALの波形が異なっているが、これは同軸(COAXIAL)伝送と光(OPTICAL)伝送の送受信特性の一般的な差であり、伝送波形だけで見ると、フォーマットとして同軸が対ジッター特性において優位であるという事も判る。電気的に完全に切断出来る部分においては、光伝送のフォーマットとしての良さは十分にあるのだが、ジッターにおいてはそういうことである。


SIGNAL STABILIZERが追加されたFX-D06Jでは、さらに急峻な波形出力を実現している事が判る。ここまで整わせると受信側でのジッター発生はかなり少なくなり、結果として上記の試聴結果に記した音質改善に繋がっている。特に注目するところはOPTICAL to COAXIAL(画像右下部分)で、光伝送で角度が緩くなってしまった部分をロジックICで強力に叩き直して急峻なON/OFFに戻しているところだ。

電源入力にPGNIIを通してみたところ、4機種全てで音場の表現力に僅かな効果があることが判った。必須とまでは言わないものの使った分だけ良くなるので、お勧めしたい組み合わせと言える。

総括
FX-D05Jは超コンパクトでコスパの良い実用的な変換器、FX-D06Jはコンパクトだが、音質面での効果がしっかりある音質改善アイテムであった。どちらもコストパフォーマンスは高いが、接続環境を問わずにどれか1台を選ぶという事であれば、筆者はFX-D06J(OPTICAL→COAXIAL)を選ぶ。もちろん、用途に合わせて選べば4機種とも良いアイテムと言える、強くお勧め出来る逸品である。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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1. DDC:デジタルデジタルコンバータ このページではS/PDIFのOPTICALとCOAXIALの間のコンバータを指している
2. ジッター:時間軸の揺らぎ
3. スレッショルド:スレッショルドとは状態を変化させるしきい値(閾値)Threshold。スレシホールドとも呼ばれる事がある

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