*

Labo’s View 039 FX-AUDIO- PW-6J PW-6J+

      2020/04/04

『使い勝手の良いコスパの高いスピーカー/アンプセレクター』

FX-AUDIO- としては大きいサイズのBTLアンプ対応※1BTLアンプ対応:BTLとはBalanced Transformer Lessの略で出力回路の+側ー側の2回路をブリッジ接続しているタイプのアンプに対応している。非対応の全ての-側が繋がったセレクターでは-側のL-ch R-ch間で短絡が起こり、故障の原因になるのリレー式のリモコン付き1:2セレクターBonneville Eaters IIが発売されている。セレクターは音質の劣化がどれくらい防げているかと使い勝手がどれだけ良いかが重要であるが、本機はどのような感じなのか。上位機種のPW-6J+との違いも含めてレポートする。

セレクターは接点である。オーディオは基本的に接点が増えると音質は低下するが、セレクターはその低下分を補って余りある使い勝手になる場合に使われる。
初号機であるPW-1『Bonneville Eaters』はありえないコストパフォーマンスを実現した実用機であるが、本機は切り替えをリレーで行い、MCUによる制御により出力を素早く切り替える事で、アンプの出力回路に優しい設計になっている。MCUのプログラムを工夫している為、リモコンも多彩に使えるようになっている。
本機のエージングはセレクターという性質上、時間よりも通過させる電力の強さが重要だと考えられる。一般的には使い始めにカチカチと何回かセレクトボタンを押してリレーを動作させるとか、大きめの音量でスピーカーを鳴らすと劣化が少なくなる事が良くあるが、PW-6J PW-6J+のどちらも特に大きな音質面の変化は感じられなかった。時間的なエージングについて、音質面での効果は極めて小さく、使っているうちにうっすらと馴染みが変わる程度なので、気にしなくても良いレベルだ。

音質について、セレクターという製品は音質は向上するというものでは無いので、劣化がいかに少ないかという事になるが、価格を大幅に超えた感じのある、十分に劣化を抑えたものだ。PW-6J+は一段と劣化が少なく、OMRON製高品質パワーリレーの効果は感じられるので、コストパフォーマンスはPW-6Jよりも高いぐらいに感じる。どちらにしても凄いコストパフォーマンスだが。
切り替え時のリレーの動作音であるが、PW-6Jはリレーの上に開口部が無いので、少し響く感じのある音で、気にならない範囲の音量である。PW-6J+はリレーの上に開口部があるので、ダイレクトでソリッドな響きの無い音で、PW-6Jより動作音は小さい。
切り替え時の音切れは殆ど無く、瞬間動作の小気味良さが印象的だ。


スピーカーケーブルを繋ぐ端子はステレオ3組、Aにアンプの出力、BとCのそれぞれにスピーカーをつなぐスピーカーセレクターとしての使い方とBとCのそれぞれにアンプをつなぎ、Aにスピーカーをつなぐアンプセレクターとしての使い方がある。端子はNFJでは標準的な金メッキでバナナプラグ対応である。
裏技的な使い方はスピーカー端子をRCAジャック等に変換して、入力セレクターにする事も不可能では無い。
動作はABとACのトグル(交互)動作で、両方OFFは電源OFFにする事で出来るが、両方ONは出来ない仕様である。2入力1出力で使う場合や1入力2出力で8Ω以下の低インピーダンスのスピーカをつなぐ時にアンプに負荷を掛けない安心の設計である。
起動時にポップノイズが出るアンプを使う場合には、本機の電源をあとで起動することで、ポップノイズの回避に使える事も付け加えておきたい。

DC-Input端子は12V0.5A以上でセンタープラス(+)、センターピン2.1mmの極めて良くあるタイプと、MicroUSB端子でUSBバスパワー(5V)のどちらでも動作する。PCのUSB端子と接続するとPCの電源との連動が可能である。本機の電源は確実に動作出来れば良く、音質には影響が無いので、レイアウトや手持ちのACアダプタによって自由に選んでほしい。

PW-6J

PW-6J+

PW-6JとPW-6J+の違いは
リレーがHUI KE製→OMRON製
天板パネルが閉じている→開口してリレーの動作と電球色LEDのイルミネーションが見える
フロントパネルのLEDインジケーター発光色が赤→青
である。
筆者はリレーの動作と電球色LEDのイルミネーションが見えるデザインが気に入っている。

リモコンの動作は、初期状態では1を押すとAB、2を押すとACが選ばれるようになっている。
PW-6Jの第1ロット以外では、複数の本体を1個のリモコンで操作出来る「連携モード」が使えるようになっている。連携モードではリモコンの1つのキーに1台を割り当てて、切り替えをトグル動作にすることで、8台までを1つのリモコンで個別に操作出来るようになる。
連携モードにするには、連携モードに設定したい本体のみ電源をONにして、それ以外をOFFにする。
割り当てたいキー(1〜8またはA1〜B5)を本体に向けて長押しする。
約4秒で本体の7セグLEDとPOWER LEDが点滅し、割り当てられたキーの番号が表示される。
表示されたら、キーを離す。
連携モードの解除は割り当てられたキーを本体に向けて長押し、約4秒で本体のPOWER LEDが点滅、キーを離して完了である。
リモコンの受光が出来る範囲内であれば、1つのキーに複数台を割り振るという設定も可能なので、アイディア次第でかなり突っ込んだ設定にも出来るところが楽しみな仕様だ。

注意したいのは、第2ロットまでと第3ロットはリモコンが互換しないところで、第3ロットはPW-6J+と互換するようになった為のようだ。

PW-6J第1ロットの連携モード対応へファームウェアのアップデート方法はこちらのリンクを参照してほしい。

総括
NFJ的にかなり重厚長大なBonneville Eaters II PW-6JとPW-6J+は、コストパフォーマンス抜群のアイテムであった。スピーカーだけではなくアンプの切り替えにも使う事が出来て、つなぐアンプを選ばない4回路(L側とR側それぞれの+と-)切り替えでBTLにも対応でリモコンも付いている。肝心な音質の劣化もかなり少なく安心して使える、どちらもお勧めの逸品である。

The following two tabs change content below.
谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
谷原 寿栄

最新記事 by 谷原 寿栄 (全て見る)

References   [ + ]

1. BTLアンプ対応:BTLとはBalanced Transformer Lessの略で出力回路の+側ー側の2回路をブリッジ接続しているタイプのアンプに対応している。非対応の全ての-側が繋がったセレクターでは-側のL-ch R-ch間で短絡が起こり、故障の原因になる

 - Labo's View