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Labo’s View 031 FX-AUDIO- FX4502J EX

      2019/07/30

『ビビッドでパワー感溢れる立体的で魅力的な音質』

デジタルアンプICをLR独立のデュアルモノラルとして2個使いにした一回り大きなボディーサイズのニューモデルが発売された。デュアルモノというとチャンネルセパレーションの高さを期待することが出来るが、どのような音質に仕上がっているのか?

電源投入直後から、ドライブ能力の高そうな感じの押しの強い音で、立体感のある音を聴かせてくれる。中高域にすこし尖ったところを感じるが、エージングですっかり落ち着いて来た、100時間程度のところで、試聴を始める。
本機の特長は、ズバリ「低域の表現力」だ。
スピーカーのインピーダンスが上がっているf0周辺の部分を果敢にドライブしてくる。
NS-10MXのウーファーをここまで楽しめる音質で鳴らすアンプは珍しく、他の密閉型のエンクロージャーとも相性が良いと思われる。真空管パワーアンプの良いところに近い印象だ。
普通のバスレフでは特段の問題は感じなかったが、可能性としてはバスレフやバックロードホーン等で強く低域を補正する設計のエンクロージャーにおいて、スピーカーのf0とダクトのチューニングの関係によっては過剰に鳴ってしまうかもしれない。
ローエンドは適度な感じに伸びており、バスドラムの細かいフレーズや、ベースラインを心地よく響かせる。中低域にはビビッドな実体感がある量感でボーカルやスネアドラムを聴かせてくれるところが良い感じだ。高域は素直な反応で、派手に鳴り過ぎない感じはFX-AUDIO-らしいところのように感じた。
定位についてはかなりシャープで、低域から高域まで、左右の振り切りからセンターまで、それぞれの実音をボケた感じにならずに聴かせてくれる。スピーカーの外側、リアへの回り込みの表現力もなかなか上手く表現しており、デュアルモノ構成の左右chのセパレーションの良さと、センター定位の確実さを両立しているところと合わせて、センス良くまとまっている。
解像度は全帯域に良好であるが、低域〜中域にかけては特に高めである。聞き慣れた楽曲の中に隠れていたパートを見つけることが出来る感じだ。
音場感は、低域の表現力がなかなか良い感じで、左右に広く、前方にも立体的にしっかり出るべきところは出る力があり、奥行方向にもしっかり描画してくれる。残響成分、特に初期反射音の表現力は凄いものがある。デュアルモノ構成のパワー段や、余裕のある配置でマウントされている特注のトロイダルインダクタが効いていると思われる。

DC-Input端子は一般的なDCジャックの他にターミナルブロックも付いている。DCジャックのセンターピンは2.5mm。2.1mm系のプラグを刺す時には変換コネクタが必要なので注意が必要だ。殆どのユーザーは解っていると思うが、2つの電源アダプタを使ってターミナルブロックとDCジャックの両方から同時に電力をかけないでほしい。
本機は電圧によって、音量が変化しないタイプで、音質の変化も比較的少なめではあるが、筆者は24Vの時の音質が歪みが少なめで余裕がある感じが気に入った。
入力はRCAコネクター、3.5mmステレオミニジャック、ターミナルブロックの3種類があるが、切り替えスイッチの無い構造による音質的な悪影響を避けるため、厳密には使っている一つ以外のケーブル等は外して使う事が望ましい。
スピーカー出力はバナナ対応ターミナルとターミナルブロックの2種類が同時に出力されるので、バイ・ワイヤリングをやってみるのも面白い。2種類のスピーカーを同時に鳴らす時は合成インピーダンスが4Ω以下にならないように、注意してほしい。
汎用DC電源等で、電源のON/OFFを外部で行う時には、本機のミュート解除のタイミングが早めの為、設備音響システム全体のポップノイズ回避用としてPW-6JやPW-6J+の併用をお勧めする。

本機はオペアンプを交換して変化を楽しむ事が出来るような構造ではあるが、OPA627APのデュアル変換基板に乗せ替えたところ発振して音が出なかった。従ってオペアンプの単純な交換は難しいと思われる。
4段階のゲイン設定は、設定を変えてもデジタルアンプICの入力インピーダンスが変わらないタイプなので低域の変化は無いが、ボリュームの位置による音質の変化はあるので、環境に合わせて適宜設定して、より好みの音質に使いこなしてほしい。

総括
デュアルモノ構成のパワー段とFX-AUDIO-としては大きめの筐体の本機は、かなり攻めたビビッドな濃い音質とチャンネルセパレーションの良さを併せ持つ仕上がりになっていた。結果として音楽を情感豊かに再生するところは、お勧めの逸品である。今使っているアンプとスピーカーの組み合わせにおいて低域の薄さを感じている人にも、是非試してもらいたい一台である。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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