Labo’s View 036 FX-AUDIO- FX-1001Jx2
2020/04/04
『ハイパワーでコンパクトなデュアルモノパワーアンプ』
業務用機的なデザインモチーフが目を引く、モノラルアンプシリーズと同じくMCU制御のステップアッテネータータイプのデュアルモノラルパワーアンプの第2弾が発売された。第1弾のFX-502Jx2の定格出力30W+30Wに対して本機は60W+60Wで、大きな違いはデジタルパワーアンプIC TPA3118がTPA3116に変更され、ヒートシンクが付いているところである。FX-501Jx2との音質面での違いを中心に試聴してみたいと思う。
最初からガッツのある立ち上がりの良い音を聴かせてくれるところはFX-501Jx2と同様である。しばらく使っていると歪み感が減ってくるが、100時間を超えたあたりで落ち着いてきた。少し余裕をもって200時間ぐらいのエージングを済ませたところで試聴に入る。電圧は24Vでドライブした。
本機は電源電圧で音量(増幅率)が変化しないタイプである。音質は変化するので、使いこなしの要素として楽しんでほしい。
全体的な印象は、中低域にパンチのある、立ち上がりの良い元気な音であるところはFX-501Jx2と同様であるが、中高域のハッキリした感じが僅かに異なる。業務用機でも定番のNE5532との相性もなかなか良い。立ち上がりの良さには、前段増幅用に使っているオペアンプNE5532からデジタルパワーアンプIC TPA3116への物理的な距離の短さと、ボリュームが無い事が効いているようなのは、FX-501Jx2と同様である。
音量感のバランスは中高域はフラットな感じではあるが少し華やかな感じ、低域に少しふくよかな感じがある。バスドラムやピッチの低めな深胴スネアドラムがちょっと豊かな響きになるので、クールな感じよりは躍動感のある雰囲気になっている方向もFX-501Jx2と近いが、中高域とのバランスで若干本機のほうがタイトな感じがある。
空間表現はスピーカーの外側は少し薄めではあるが、後方まで再現出来る。高さ方向もまずまずでFX-501Jx2と同じ方向だ。
音場は奥行方向が浅めではあるが、破綻の少ないもので、左右方向には独立した(デュアルモノ構成)パワー段が効いているようで、コーラスパートなどをしっかり描き分ける表現力も同様。
解像度は少し高めで、自然な感じに描き分けるがFX-501Jx2より解像度が高い感じがする。
音像はFX-501Jx2より少し小さく、定位の精度もFX-501Jx2より僅かに高い。ボーカルがFX-501Jx2より僅かにヴィヴィッドな感じに表現されるところに違いを感じた。
デュアルモノラル構成の利点は左右のチャンネルのパワーアンプICを独立させている為、チャンネルセパレーションの向上やチャンネル間の干渉(大出力時に大きい出力のチャンネルの影響が小さい出力のチャンネルに影響する)が少なく、筐体が1つにまとまっていて使い勝手が良いところであるが、試聴した音質からもデュアルモノラルの利点を活かしている事がわかった。
本機はステップアッテネーターが特長である。
音声信号がステップアッテネーターの固定抵抗を通る訳では無く、ステップアッテネーターの位置がMCUを通して制御信号としてデジタルパワーアンプIC TPA3116に送られる事で、増幅率が変化する仕組みになっている。
一般的なアンプのように音声信号が可変抵抗(ボリューム)を通る事が無いので、高音質になるという設計で、ボリュームに付帯する歪み感や雑味感を減らす効果をもたらしている。
使い方としてはステップアッテネーター(AT-01J、02J等)経由でのDAC直結と、プリアンプ(TUBE-OOJ、01J、03J等)との接続が考えられる。
まず直結であるが、DAコンバータの出力をステップアッテネーターで適宜減衰させてから、本機に接続する事で、可変抵抗器を一切通らない音を楽しめる。AT-02Jや01Jを-20dBにセットすることで、大音量にしなくても良い感じに鳴らす事が出来てお勧めである。
DAコンバータに送るPC側の設定として注意してほしいのは、音量をPC側でコントロールする場合は24bit動作するアプリケーションとドライバでDAコンバータを動作させて、bit落ちを低減させるセッティングにする事である。
プリアンプやアッテネーターを使った接続時には良質な短いケーブルで繋いでほしいが、場合によっては、本機からスピーカーの距離を短く、プリアンプと本機間で距離を稼ぐ事で音質が向上する場合もある。
また、ステップアッテネーターは増幅率を簡単に揃えることが出来るので、2ch以上のマルチチャンネルで複数台を同時に使う時にも便利である。
DC-Input端子は12V~24Vの入力に対応する。センターピンは2.5mmになっている為、2.1mm系のプラグを刺す時には変換コネクタの準備を忘れないようにしてほしい。
低めの電圧でも普通に動作するが、電圧によって僅かに音質が変わるので、好みの電圧を探すのはアリだ。大出力で使う場合は24V一択である。
本機は電源OFFでも電源回路のバルクコンデンサが入った設計になっているようで、ACアダプタを動作させたままの状態でDCプラグを本機に挿入すると火花が出る事がある。火花の発生そのものには大きな問題は無いが、パチっとした時の見た目と音でびっくりする事とプラグとジャックの接点保護の観点から、DCプラグの挿入時にはACアダプタをコンセントやタップから外して動作しない状態にしてほしい。
本機は24Vで動作させる時にも余程の大音量でなければ放熱の問題は気にしなくて良いが、大音量で動作させる時には、上部を開けてセッティングしたほうが熱が籠らなくて良い。一般的にパワーアンプの上部は熱が発生するので開けておくが、発熱が少ないデジタルアンプに慣れてしまうと、下部にパワーアンプをおいて上部にDAC等を積み上げたりしてしまうことがあるので、そのような使い方で筐体が温かくなる場合は、上部を開けておいた方が無難という事である。
DC電源ノイズフィルターPetit Susieを組み合わせて使ってみたところ、スムーズな雰囲気で解像度と空間表現が大幅に向上した。お勧め出来る組み合わせと言える。
本機はオペアンプを交換して音質変化を楽しむ事が出来るが、その場合全ての保証が効かなくなる為、必ず自己責任の範囲で楽しんでほしい。
LM4562に交換すると、中高域が華やかになり、空間表現と解像度がかなり向上する。元気な感じや音の塊感は標準のNE5532がやや上回るが、全体のまとまりはクールな方向のナチュラルでかなり良い感じである。
OPA627AUを2回路変換基板に載せたものに交換すると、元気さや塊感を減らさずに奥行方向の深さ、空間表現、解像度が向上する。元からの迫力に繊細な表現力がアップしたビビッドな音質はお勧めである。
前述のDC電源ノイズフィルターPetit Susieと組み合わせると、魅力が更に高まる音質が楽しめる。
ボディーの中間部が筒状でボリュームノブを外さなければ内部にアクセス出来ないのはFX-501Jx2同様である。
総括
デュアルモノ構成としてパワーアンプICをParallel BTL※1Parallel BTL:左右独立ICでそれぞれのICが2ch分を+-側それぞれに使い、理論値で電圧を2倍、電力は4倍になる駆動方式で使う本機は、FX-501Jx2と同様に立ち上がりの良い元気な音に少し磨きを掛けた音を聴かせてくれた。ボリュームを1つ減らす事で音質に対する効果は確実に出ているのはFX-501Jx2と同様。コストパフォーマンスは特に高く、レイアウトのしやすさ、特にステレオアンプとの入れ替えが簡単に行える事は実際には使いやすい。
DC電源ノイズフィルターPetit Susieとの組み合わせでは、かなり音の魅力が増すので、同時購入を強くお勧めしたい。
谷原 寿栄
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References
1. | ↑ | Parallel BTL:左右独立ICでそれぞれのICが2ch分を+-側それぞれに使い、理論値で電圧を2倍、電力は4倍になる駆動方式 |