Labo’s View 007 FX-AUDIO- FX-01J TYPE-A
『小さなボディに侮れない高音質を充填したハイC/Pモデル』
コンパクトなボディにハイレゾ対応のBRAVO SA9023+Burr-Brown PCM5102Aという、日本国内ではコストパフォーマンスの高さで人気の組み合わせを搭載したFX-01Aの細部をブラッシュアップしたニューモデル。スペックの高さとコンパクトなボディがどんな音質に仕上がっているのか。兄弟機のFX-01J TYPE-Bとの違いもチェックする。
エージング前から軽やかな音質を聴かせる。暫くすると密度感が増してくるので、そのままエージングに入る。部品点数の少なさから短時間でエージングが進むかと思われたが、MELF抵抗やECHU(積層メタライズドPPSフィルムコンデンサ)が意外とエージングを必要としたようで、48時間程度で深みのある音質に安定したきた。試聴は基本的にFIRの設定で行った。
全体的にはUSBバスパワーでドライブされているとは考えにくい程の安定した音質、深みのある音場を聴かせる。また、出力がダイレクトカップリングなので、位相感が素直な音が印象的。MELF抵抗とECHUがサイズと価格を超えた音場表現力を見せる。
周波数方向には低域はゴリゴリに押し出してくる感じは無いが、センス良くタイトに程よい感じだ。意外と超低域まで再生している。中域は不自然なハリ出しの無い、聴き易い感じであるが、ブラスの音等にはしっかり反応する。高域は意外とキメの細かい、歪み感の少ない音がする。シンバルがショットしたあとに揺れる部分などもしっかり再生する。五月蝿く感じない仕上がりはは本機の特長と言えよう。
レベル方向には程よいアタック感で、スピード感が足りない感じは無い。
音場は不自然に広げすぎるような部分は無いが、かなり自然な範囲で広めで、左右方向はもちろん、上下や前後方向の表現力を持っている。
音像は比較的コンパクトに纏まって、センター定位も良好。音数が多い時に音像がボヤけるような事も無い。
解像度は予想以上に高めで、外付けのDACを付けた意味として捉え易い部分だ。
歪み感は全帯域で抑えめで、聴き易い音質感につながっている。
TYPE-Bとの違いは奥行の深さと音場感で、その部分は価格差以上に違う。実音はTYPE-Bより付帯音のバランス等で僅かに大人しい感じがあるので、アナログプレーヤーのカートリッジのように、聴くソースによって使い分けても面白い。
USBを接続した時に、1回目はPC側のドライバが認識しない事があるので、その際は落ち着いて一度USB接続を外して、再度接続すると認識する。
個体差の可能性が拭えないが、PGNを通すとPC側のドライバが認識出来なかった。TYPE-Bでは使用可能なので、その違いは個体差なのか、DACチップによるところなのか。
本機はDACチップ内のディジタルフィルタを変更出来る。
FIRとは有限インパルス応答 (Finite Impulse Response)で直線位相が可能で非再帰構造から動作が安定しており、クセの少ない音質が特長。急峻な特性を必要とするDACのローパスフィルタの場合は高いフィルタ次数が必要になる為、回路規模が大きくなり、群遅延が大きくなるところが難しいところ。殆どのDACのディジタルフィルタはFIRを採用している。切り替え可能な場合もデフォルト設定はFIRである。本機も標準設定としてはFIRをお勧めする。
IIRとは無限インパルス応答 (Infinite Impulse Response)で群遅延が少なく、回路規模も小さく収まるところが設計上の特長。非線形位相がやや癖のある高域に感じる部分と群遅延が少ない立ち上がりの良さをどうバランスさせるかが難しいところである。
本機をIIRフィルタに設定すると、高域の歪み感が僅かに増えるが、ソースによってはキレの良さやヌケの良さが僅かにアップしたようにも感じられる為、ロック、メタル、EDM系のソースには試してみる価値が大きくある。また、映像機器との同期運転時にはFIRより音のタイミングを早く出来る。(=低遅延である)
切り替えスイッチは起動時にDACチップから一度スキャンされる構造の為、通電(動作)中は切り替わらない。一度USBケーブルを抜いて、再度起動させるとスイッチで設定した状態になる。
総括
強烈なコストパフォーマンスとサイズから想像し難い全体的な音質感はソースへの適応範囲が広く最初の一台にお勧めであるが、サイズを活かした運用で2台目以降にもお勧めの逸品である。
谷原 寿栄
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