Labo’s View 018 FX-AUDIO- DAC-H6J
『端正な定位と立体感が特長のハイレゾ対応D/Aコンバータ』
コンパクトでキリッとしまった外観と、入力とサンプリングレートをしっかり表示するフロントパネルが目を引く、ESS製のDACチップES9023Pを搭載したヘッドフォンアンプ付きのモデルが登場した。FX-AUDIO-でESS、果たしてどんな音に仕上がっているのか、USBレシーバーにVT1630Aを採用した第2ロットを試聴する。
いきなりクッキリとした印象の音が出て来て、エージング後に期待が高まる感じだ。
エージング中の音質変化は穏やかに歪み感の減少、前後方向の音場の深さと正確さに表れやすいようだ。20時間ぐらいから十分な感じの音質になってくるが、その後も少しづつではあるが、音質が向上していき、200時間ぐらいで変化が落ち着いて来たので、試聴する事にする。
全体的な目立つ部分としては、音像定位、音場表現がボディーサイズや価格からは想像出来ないレベルにある。
特にヴォーカル帯域の緻密な描画力は魅力的で、センターに浮かび上がる音像とともに音楽を楽しむ事が出来る。
周波数方向のバランスは全体的にフラット感の強いクセの無いスムーズな感じの印象で、低域は制動が効いた感じで無駄に膨らんだ感じや誇張の少ない感じだ。
中域から高域にかけてもスムーズで特定の音域が大きくなる感じは無い。
音場感は中域の表現力が極めて高い。ヴォーカルがスピーカー間に浮かび上がるところは高級機の感じを上手く表現している本機の素晴らしいところだ。
左右方向、奥行方向も自然な範囲で広い。中域は上下方向を表現出来ている。
定位については、全帯域においてセンターがしっかり出ているところが心地よく安心して聴ける部分である。
歪み感は全帯域で低めで、周波数方向の音量バランスの良さと相まって、聴きやすい音質感を醸し出している。
解像度は中域において、特に良い感じで、音離れが良く、音場感の良いところでもある立体感とともに、本機の良いポイントである。
ヘッドフォン出力はライン出力に傾向は似ていて、中域の緻密な表現力が良く活かされている。
低域はゴリゴリに押し出す感じでは無いが、ローエンドまでしっかり伸びている。
弛みの少ないクッキリとしたキレの良い音で、聴き心地が良い。
中域は情報量が多く分解能も高いが、神経質な感じにならないところにうまく纏まっている。
高域は尖ったところが少ないが、しっかりハイエンドまで伸びているクリアーな感じに纏まっている。
音場についても上手くバランスさせていて、低域は膨らみ過ぎず、納まりの良い方向。中域は低域より少し広めに感じる。
高域は中域からの流れに沿わせつつも膨らみ過ぎない端正な方向に纏まっている。
DC-Input端子は12Vでセンタープラス、ピンは2.1mmで標準的な仕様。1Aで十分動作するが、容量に余裕を持たせても良い。
本機のSELECT/STBYスイッチは、長く押すと起動とスタンバイを切り替えし、短く押すと入力切り替えになっていて、一つに集約しているが、使い難い感じは無かった。
STBY LEDの表示は逆(動作しない時に点灯がスタンバイ)に感じた。本機の動作仕様の場合はOPERATION(OPE)のパネル表示が望ましいと思う。
本機はオペアンプを交換して、ヘッドフォン出力の音質変化を楽しむ事が出来る。
OPA627に変更すると、輪郭がよりクッキリして、スピード感のあるストレートな音になり、細かい音の表現力も増す。
音場も左右、上下方向の拡大も感じられる。お勧めしたいところではあるが、筆者の環境では可聴帯域外で僅かに発振しているのか、少し発熱が多い感じがした。
発振が理解出来、必要な対策が出来るユーザーにだけお勧めしたい。
OPA1622に変更すると、少しファットで肉感的な感じになる。
立体感や押し出し感も少し強くなり、より音源を近くに感じたい時にはお勧めである。
全ての保証が効かなくなる為、自己責任の範囲で楽しんでほしい。
電源にリトルスージー、USBにPGNを使うと、またひと味グレードアップした音になるので、持っているユーザーは是非試してみてほしい。
総括
手頃な価格でESSの雰囲気をしっかり感じられる本機は、ハイコストパフォーマンス機が溢れるNFJにおいても、かなりコストパフォーマンスが高い逸品である。
全体的に誇張した感じにならない仕上がりと、クッキリとした中域の音場感や雰囲気の良さは一聴の価値があり、ヘッドフォンアンプ部分もしっかりとした音を聴かせてくれる本機はお勧めである。
谷原 寿栄
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