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Labo’s View 029 FX-AUDIO- AT-01J

      2019/06/22

『使いこなしの幅を大きく広げるアッテネーター』

今まで有りそうで無かったタイプのアッテネーターAT-01Jが発売された。シンプルなアッテネーター※1アッテネーター:減衰器 音量を下げる時に使うというと抵抗入りケーブルになってしまい、高価なステップアッテネーターかパッシブ※2パッシブ:受動態 オーディオでは電源を使わない、増幅しない等の意味で使われるのボリュームで、音質劣化を極力起こさない方向で減衰量が選べるアッテネーターは欲しい局面は多々あるが、今まで市場に存在していなかったように思う。革命的な本機について、しっかりチェックしたいと思う。

価格からは考えられないレベルの劣化の少ない音がする。音声信号が極めて短い距離になるように設計されている事と、DIPスイッチの接点に気を遣ったものを使っているのが効いている。
チャンネルセパレーションの悪化も殆ど無く、これは左右のチャンネルのコールド(GND)側が独立している構造が効いているようだ。
同じ音量でのボリュームの位置が変えられるという事は、思った以上に使い道が多い。

使い方1 「ボリュームのギャングエラー(左右の音量差)の回避」
ボリュームは構造的に僅かなギャングエラーが避けられないが、稀にちょうど使うところに限って気になる事がある。本機を使ってボリュームの位置を移動させる事により、状況は改善する。
基本的には-6dBの設定で良いが、たまたまその時のボリュームの位置でもギャングエラーが気になる時は-10dBにしてみるのもアリだ。

使い方2 「ボリュームの使い勝手の改善」
ハイパワーで増幅度の高いアンプの場合に、ちょっと触っただけでも大きな音量変化を起こしてしまい使い勝手が悪い事がある。本機を使ってボリュームの位置を変える事で、滑らかな変化量の位置にする事が出来る。
ライブハウスやコンサートホールで開演前のBGMをCDプレイヤーで流すような場合、PADをONにしても入力感度が絞りきれず、フェーダーが-20dBとか-40dBぐらいのところがあり、スムーズなフェードアウトが難しい事がある。そんな時には本機を使う事で簡単に滑らかなフェードアウトが出来るようになる。設備音響では音量の制限にも使えるのでお勧めである。

使い方3 「入力レベルを下げる事でのヘッドルームの拡大」
CDプレイヤーが発売されるより前に設計されたプリアンプ、プリメインアンプは基本的にライン入力の最大レベルが2Vで設計されていないので、サチュレーション※3サチュレーション:レベルが大きくて音声が歪む事。激しい歪みは「クリップ」として区別することがあるが発生しやすいが、本機でレベルを下げる事でレベルマッチングをとる事が出来る。

使い方4 「ボリューム全開でボリュームでの音質変化を極力回避」
ボリュームは音質劣化が避けられない素子であるが、音量コントロールをボリュームだけで行っている(=帰還回路の増幅度を変えて音量を変化させていない)機種については、ボリュームを全開にする事でボリューム素子の音質への影響を最小にする事が出来る。
自由なレベルコントロールは出来なくなるが、本機の-20dBポジションでボリュームを上げて行くと意外な変化を楽しむ事が出来る。音量が足りない時は-10dBポジションで。
過大な音量にならないようにするため、使い始めは必ずボリュームを絞ったところから上げていって使ってほしい。
音量をボリュームの抵抗値で決める機種と帰還回路の増幅度で決める機種の見分け方は、NFJの取り扱い商品の範囲では入力バッファアンプが付いているかどうかでほぼ判断出来るが、基本的には他社製品の場合を含め、ボリューム回路周りを調べて判断してほしい。
参考までに、代表的な音量をボリュームの抵抗値で決める機種はFX-202J、帰還回路の増幅度で決める機種はFX-2020A+やLP-2020A+である。

使い方5 「パワーアンプ直結で音質劣化を極力回避」
上記ボリューム全開同様にパワーアンプ直結で使う事で、ボリュームを一度も通さないという使い方も出来る。組み合わせる機器によっては、鮮烈な音になる可能性がある。その場合はDAC等の出力をプレイヤーアプリケーション等でボリュームを下げた状態から上げて行ってほしい。

本機を使う時にはなるべく高品位な短いケーブルを本機の出力側に使うようにして使うとノイズ特性的に理論的には良い。パワーアンプ直結等の使い方で、スピーカーとパワーアンプを最短距離で接続している時はスピーカーケーブルが短い事を優先して、本機側の配線を延ばして対応するか、本機を2台使ってアンプ側に寄せて使う方法もある。


本機の設定を変える時は基本的にアンプの電源を落とすかボリュームを絞った状態で行ってほしいが、回路が上手く出来ているのか、音が出る状態のままで変更しても筆者の環境では激しいノイズは出なかった。

総括
音質変化が少ない固定抵抗素子での3段階の減衰量を選べるアッテネータは、音質改善や使い勝手の向上にとても効果のある便利な一台であった。痒い所に手が届くという表現がぴったりな本機は、是非使ってみてほしいお勧めの逸品である。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

1968年生まれ 音楽業界で30年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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1. アッテネーター:減衰器 音量を下げる時に使う
2. パッシブ:受動態 オーディオでは電源を使わない、増幅しない等の意味で使われる
3. サチュレーション:レベルが大きくて音声が歪む事。激しい歪みは「クリップ」として区別することがある

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