*

Labo’s View 019 FX-AUDIO- TUBE-04J

   

『真空管とデジタルのナイスなハイブリッドアンプ』

TUBEシリーズの04番はハイブリッドアンプが登場した。
入力段バッファに真空管6K4、パワー段にはデジタルアンプYDA138を使った本機はTUBE-01Jの真空管回路設計ノウハウとYDA138キット〜YD202Jまでのデジタルアンプの設計ノウハウが注ぎ込まれていていると思う。
真空管を通した音をヘッドフォンアウトからも出力出来るところも魅力的な本機はどんな仕上がりになっているのだろうか。

真空管装着の儀では、足の曲がり、輸送中の球の破損が無いかを確認して、ピンの無い方向を合わせて、各端子の間にピンが入るように僅かに動かして、全体が良い位置に収まったら、まっすぐに差し込む。本機付属の真空管6K4は6J1より長い。
セッティングしてすぐの音出しでは、少し硬めな感じがあるが、数十分で良い感じを見せ始める。100時間程度で変化が落ち着いて来たので、試聴に入る。

真空管とYDA138は良くマッチしていて、納まりの良い音場と僅かに華やかな音が印象的だ。
基本的にフラットで広い音楽ジャンルに合うチューニングはNFJ&FX-AUDIO-の方向性で仕上がっている。
低域は僅かに量感を感じさせつつ、ローエンドはベースの最低音あたりから滑らかに落ちて行く感じで、聴きやすい。
中域〜高域にかけては真空管の味付けが標準の6K4ではしっかり目に付く部分があるが、YDA138の落ち着いた方向のキャラクターと合わせる事で、上手くバランスさせている。
ハイエンドは滑らかに少し落ちて行く感じはYDA138のキャラクターを上手く活かしていると思う。
滑らかさには出力ローパスフィルターに使われているECHUの効果を感じる。
音像定位は極小という感じでは無いが、不自然な大きさでも無い感じに仕上がっている。
音場は左右にはしっかり広がり、奥行方向は不足なく手前側には少しという、不自然さの無い聴きやすい仕上がりで、頭の後方や上下方向も少なめだが強めのソースによっては感じられる。
全体的な音質感はレトロなイメージでの真空管のイメージは殆ど無く、周波数レンジやスピード感はTUBE-01J方向の仕上がりになっている。

余程の低能率スピーカーで大音量を要求しなければ、本機の出力量で十分楽しめると思う。
ゲイン設定は6dBステップで4段階あり、最大で18dBのブーストがYDA138で掛けられる仕様で、ゲイン設定によってYDA138の入力インピーダンスが変化する部分を活かして、低域のカットオフのコントロールも可能だ。

ヘッドフォン出力もなかなか楽しく使える出来になっている。
カップリングコンデンサの容量が程々に大きいのでローエンドの不足は無く、ハイエンドまでフラット感のある仕上がりで歪み感も少ない。左右セパレーションと立体感も上々。
ハイインピーダンスで能率が著しく低いヘッドフォン以外であれば、さらっと普通に鳴らしてしまうだろう。その出音には真空管増幅の旨味が適度に含まれているのが、本機の特長の大きな部分と言える。

DC-Input端子は12Vでセンタープラス、ピンは2.1mmで標準的な仕様。
2Aぐらいでも十分動作するが、容量に余裕を持たせても良い。
真空管用の高電圧を作り出す回路が有る為、電圧が高めになったりしないようにトランス系の電源アダプタを使う際には電圧の精度に注意してほしい。

本機は真空管を交換して変化を楽しむ事が出来る。
FX-AUDIO- TUBEシリーズ交換用真空管6J1に取り替えると、全体的にコントラストが深く、レンジ感もワイドで、ハーモナイズされる成分が大きく変わる事が判る。
音場は立体感が増し、前方へのせり出し、頭の後方への回り込みに顕著な差を感じる事が出来た。
6K4の納まりの良い音場感から強力なHi-Fi方向に変化するので、是非交換して楽しんでほしい。
また、電源にリトルスージーを使う事で、解像度や立体感が変化するので、持っている人は是非使ってみる事をお勧めする。

総括
予想以上に真空管とデジタルアンプの相性の良さを感じられた。
付属の真空管6K4は真空管のハーモナイズされる部分が解り易く、これはこれでアリとも言える出来だが、6J1にする事で簡単にキャラクターを変える事が出来ることは、購入後に楽しく使える部分と言えよう。
真空管プリ、デジタルパワーアンプ、AB級ヘッドフォンアンプがワンパッケージになっている本機は思った以上にお勧めである。コンパクトに設置出来る点も見逃せない。

The following two tabs change content below.
谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
谷原 寿栄

最新記事 by 谷原 寿栄 (全て見る)

 - Labo's View