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Labo’s View 002 FX-AUDIO- TUBE-01J

   

『実在感が際立つ音質』

本機を購入すると、最初の儀式は真空管の装着である。
真空管の足は製造後かなりの年数が経っている事を考慮すると、接点改質剤等でクリーニングしてから使うと良い。差し込みやすくなり、なじみも良く音質にも良い影響がある。
真空管の足の向きはハッキリ分かり、ビギナーでも間違える事なく安心して装着出来る。
機器を接続したら動作を確認して、その後しっかりとエージングを行う。

本機の接続は、パワーアンプの手前、ヘッドフォンアンプの手前、ADコンバータの手前等の既存の配線に割り込ませるイメージで行う。扱える信号レベルは入力、出力ともラインレベルだ。かなり硬く重量のあるケーブルを使っている場合は、ボディを浮き上がらせないように、適宜ボディの四隅に重りを乗せると良い。

音を出した瞬間、真空管を使った低価格な民生機にありがちな緩さが無い事に気づくだろう。もちろん、残留ノイズが気になるというような事は皆無である。
価格や大きさに全く囚われない、実にしっかりとした感じのある周波数方向にフラットな音質で、キレや沈み込みの深さも十分で楽しめる音質であり、音場表現としては左右方向はもちろんであるが前後方向、特に奥行きの表現力が高くなるように感じた。
他の機器にOPA627を使って向上する音場感とも共通する雰囲気があるのは実に興味深いところだ。
定位の精度や解像度は下がる事なく、真空管のマイルドなエキサイター的な効果により、聴感上は向上したように感じる。
筆者は真空管の効果として、僅かな偶数次歪みの付加とソリッドステート系素子との増幅時の直線性の違いが組み合わされる事で、トータルでの音質感が向上していると考えている。
具体的には、ボーカルの立体的な雰囲気や音楽全体の空気感、楽器やパート間の混ざり方の変化は分かりやすいところである。組み合わせる機器によっては変化するところも変わるのは当然だが、総じて全体的な雰囲気が良くなる傾向である。

気になる動作時の真空管の温度だが、思っていたよりも意外と低く、夏場でも室温が上がるような感じにはならず、密閉された環境でなければ心配なく使える範囲である。


Jモデルでの大きな違いはこのゲイン設定スイッチである。
切り替え時のノイズや、回路の実装での音質の劣化が殆ど無いように工夫されており、積極的に使える機能である。
基本的にはスマートフォンやCDプレーヤ出現前のコンポーネント機器のラインアウトは0dB、CD,DVD,ブルーレイプレーヤ等の2ボルト系機器のラインアウトは-6dBで使用する。
応用としては接続機器の感度等との兼ね合いでボリュームを中間にする場合、ゲイン設定スイッチを使って一番特性の良くないボリュームのセンター周辺を避けて使う事で、実使用時の音質の悪化を低減させる事が可能である。
(例えば-6dBでボリュームがセンターになってしまった場合、スイッチを0dBにすると9時ぐらいの方向で済む)
また、他の接続機器のボリュームに対しても同様の使いこなしとギャングエラーの回避が可能。
基本的には上流側を歪まない範囲で大きくとりつつ、ボリュームの音質が悪化するポイントを外してセッティングする事で、トータルでの音質の悪化を低減させる事や、音質的に心地よいポイントにする事が可能である。
BGM用途では通常時のゲイン設定を0dBにしておき、一時的に下げたい時に-6dBというのも有効である。通常のプリ(メイン)アンプの-20dBのミュートスイッチより下がり過ぎない為、使える局面が多い。

Jモデルではその他に電源安定回路を強化しており、その要はファインメットビーズの採用である。その他にも細かなチューニングを行っており、J無しのモデルよりS/N比が聴感でもしっかり向上している。また、J無しのモデルより電源品質の影響を受けにくくなっているが、リトルスージーやファインメットビーズ等で更なる安定感やクリアー感が変化するので、是非試して頂きたい。

真空管の醍醐味である球の交換を別売の特級品のミルスペック選別グレードで行ってみる。足の位置が個体差で少し変わるので、丁寧に脱着する。あたりまえだが電源はOFFで行う事。
電源を入れたところから、少し雰囲気の違う音が出てくる。数十分で、より精度の高いシャープな音像が見え始め、環境や個体差にもよるが、100時間程度鳴らすと、より定位のしっかりとしたバランスの良い安定した音場感が楽しめる。
この変化は価格を考えると相当にお買い得で魅力的である。在庫量に限りがあるようなので、同時に購入する事を強くお薦めする。
また、付属の真空管は5000時間の使用が可能との事で、寿命に対してナーバスになる事は全く無いが、寧ろ脱着時に無理な力を掛けたり、落下させて破損させないように注意してほしい。


真空管制振リングは管の共振を低減して、マイクロフォニック効果を低減させる優れもので、劇的では無いが音質への効果が沈み込みの表現力の向上などで感じられる。
また本機は振動対策を出来るだけ行っているが、真空管そのものが振動に弱い素子である為、置き場所が音質に影響する事を考慮して安定した場所に設置したい。

総括

J無しのTUBE-01も、予想以上に楽しめる商品だったが、TUBE-01Jでは更にしっかり磨かれたオーディオ製品となっている。この価格でこの音質的体験は予想不可能な領域といえよう。買わないという選択肢は殆ど無いと思われる。また、イコライザー以外の音質調整要素としても大変魅力的なプロダクトである。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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