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Labo’s View 026 FX-AUDIO- TUBE-00J LIMITED

      2019/01/05

『ついにここまで到達した。ハイブリッド真空管プリアンプ』

大好評のTUBE-00Jに、限定モデルTUBE-00J LIMITEDが発売された。機能的にはシンプルな真空管プリ(ライン)アンプだが、真空管とオペアンプ以外にもしっかり手が入っており、回路素子の変更でクオリティーアップを行っている。TUBE-01J LIMITEDの仕上がりも良かったため、期待してしまうところが大きいが、しっかりとレポートしたいと思う。

真空管装着だが、かなり慣れて来たユーザーも増えてきたと思うが、基板側のソケットの穴の無い方の向きを確認して、足の無い方向に向きを揃えて、真空管を落下させないように注意して、無理な力を掛けないように、まっすぐ装着する。キツい時は真空管の足に負担が掛からない程度に少し動かしながら行うと良い。

本機の接続は、DAC出力、CDプレーヤーの出力、スマートフォンや携帯プレーヤーの出力のあとと、パワーアンプの手前、ヘッドフォンアンプの手前、ADコンバータの手前等の既存の配線に割り込ませるイメージで行う。扱える信号レベルは入力、出力ともラインレベルだ。レコードプレーヤーのピックアップ出力をそのまま入力することは出来ない。レコードプレーヤーにフォノイコライザーが内蔵されていて、ラインレベルで出力出来る機種であれば接続可能だ。

最初から期待出来るスピード感のあるワイドレンジな音を聴かせるが、そのまま聴いていると雑味が減ってくる。100時間を超えたところで安定した感じになったので、試聴を開始する。

入力レベルに対するエキサイター的な効果は、オリジナルのTUBE-00Jよりも穏やかな方向である。これは付属の真空管が6J1になった事による変化だ。筆者はラインレベル(2V rms)系で音量レベルの高いソースに対しては10時〜11時ぐらいで使うとバランスが良く感じた。

オリジナルのTUBE-00Jの真空管を6J1のミル・スペック選別グレードに換えて、オペアンプをOPA627に換えた時の印象とは少し違う音質で、より精密な感じがするのは、信号通過部分の抵抗やコンデンサを変更した部分が大きい。メーカーとしてバランス良くチューニングした部分を感じさせてくれる。
周波数方向の反応はフラットな仕上がりになっている部分は、オリジナルのTUBE-00Jと同一傾向だが、よりレンジが広い。特にローエンドの自然な伸びが心地よい。歪み感の少なさ、パーカッション類の金物の素直な鳴り方も本機の良いところである。
音場感についてはオリジナルより精度感のある表現力をもつ。前後方向の表現はかなり落ち着いた仕上がりになっている。
解像度は全帯域でオリジナルよりかなり向上している。
音像はオリジナルよりコンパクトでよりシャープな方向である。
弦楽器の程よいツヤ感のある実音、音と音の混ざり方や重なり方に価格からは想像出来ないものを感じるが、そのレベルはかなり強烈で、かなりのところに到達した感じがする。

DC-Input端子はスタンダードな2.1mm系である。なるべく品位の高いAC/DCアダプタを使いたいところだ。本機は昇圧回路があるので、入力電圧は12Vを守って使ってほしい。トランス電源等では負荷によって電圧が変わるものがあるので、注意が必要だ。

本機は真空管とオペアンプを交換して変化を楽しむ事が出来るが、ここまでトータルに仕上がっていると、あまり必要性を感じなかったが、6J1互換の真空管や2回路のオペアンプを換えて、システム全体のマッチングをとる際にLIMITEDで変更されたパーツが有効になるだろう。
オペアンプの交換はケースを開ける必要があり、全ての保証が効かなくなる為、自己責任の範囲で楽しんでほしいのはいつも通りだ。
オプションの真空管制震リングもマイクロフォニック効果を下げる方向で効くので、試してみてほしい。
リトルスージーを持っている人は是非、試してほしい。僅かではあるが、音場感や解像感に変化がある。

総括
本機は予想を大幅に超えるクオリティで驚いた。前段増幅にオペアンプを使っている事のメリットを強く活かしたワイドレンジでスピード感のある音質と、真空管によるエキサイター効果を併せ持つ特長は、高品位パーツの投入やトータルで調整した新たなレベルの音質コントロールによって、パワーアンプやプリメインアンプの前段にはもちろんの事、ヘッドフォンアンプの前段に接続する使い方にも特に適していると感じた。限定生産の為に入手が難しいが、お勧めしたい逸品である。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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