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Labo’s View 032 FX-AUDIO- FX-04J+

      2019/09/04

『ES9018K2Mの特長を活かしたコンパクトなUSB-DAC』

DAC ICにESS社のES9018K2Mをを使った高音質USBバスパワーDAコンバータFX-04Jに、高音質化改造を標準で施したFX-04J+が発売された。
元々のDAC-ICの性能の良さとFX-AUDIO-ブランドのノウハウの組み合わせは、今回どのような仕上がりを見せてくれるのだろうか?
特別限定モデルのFX-04J+ NFJ Editionについても触れたいと思う。

エージング前にはやや硬質で尖った感じの音質だが、音の分離感、定位などに素性の良さを見ることが出来る。
数時間で解り易く聴きやすい方向への音質変化を感じるが、更にエージングを進めて行くと100時間ぐらいで、十分良い感じになったということで、一旦試聴を開始したが、試聴中にも変化が感じられるため更にエージングを行い、200時間を超えたあたりで変化が少なくなった為、念のため更に50時間、トータルで250時間ほどエージングした状態で試聴を行うことにした。
USBレシーバーICはVT1728Aの為、試聴はサンプリングレート88.2KHzの24Bitで行った。

音質は全体的に素直な感じで、FX-AUDIO-的な癖のない方向で仕上がっている。
TL072のキャラクターを活かしたスピード感のあるクリアーな音質感はDAC ICのES9018K2Mと相性が良く感じられた。チップタンタルコンデンサによるスタビリティの向上もこの部分に効いているように思う。

USBバスパワーである事のネガティブな部分を全く感じさせないところは、このシリーズの先発機の設計ノウハウが活かされているように感じる。試聴は敢えてPGNⅡ無しの状態で行っている。
ここまでDAC-ICが高精度になると、デジタルっぽさはかなり少なくアナログ的に感じるが、しっかり聴くと設計段階で目指しているところが、むしろアナログを超えたところにあるように感じた。低域から高域までの全帯域において、解像度が高めであるところに特長を感じるが、中域の解像度は特に高いところが印象的である。

音量感は、聴感上において超低域から超高域までドを付けたい程のフラットな感じで、超低域までフラットに伸びている感じは、ダイレクトカップリング(出力カップリングレス)効いていると思われる。
解像度は全帯域に高いが中域の楽音に対してリアリティーの高い状態で、一音一音を正確に分けてくる能力には、ボディーサイズを考えると恐ろしい程である。単音の正確さから構成される和音の響きが美しい。実音とリバーブの分離も正確で、エンジニアの演出意図がしっかり伝わってくる音になっている。
音場は正確な描写の範囲で広く、スピーカーの内側と外側のつながりも自然で、後ろを含む全方位360度を上手く再現出来ているところが素晴らしい。前方の奥行方向の表現も良く、メインボーカルの立ち位置も丁度良くホログラフィックに表現出来ている。
音像もシャープでクッキリしているが、それでいて過度な表現にならないところがとても心地よい。スピーカーの外側でも音像のボケが少ないところも魅力的だ。

USB端子の横にあるLEDは常時点灯になったので、点滅より気にならなくなった。輝度もLEDを奧に実装するようにして眩しさを低減して使いやすく仕上がっている。

INPUT端子は形状はUSB TypeBでUSB1.1/2.0対応のUSBオーディオクラス1.0である。
しっかりとした品質のUSBケーブルを使いたいところだ。
コンパクトなボディーを活かして、なるべく最短距離でアンプに接続することをお勧めしたい。

本機にPGNⅡを使うと音質の変化を楽しめた。全体的にしっとりとした落ち着いた方向で、音像定位の精度が少し上がった感じで音場表現に少し深みが増した感じだ。ノイズが多めのPC等に繋いでいる時には特に効果がある。


本機はLPFとI/Vのオペアンプを交換して、音質変化を楽しむ事が出来る。ユーザーでの交換は全ての保証が効かなくなる為、自己責任の範囲で楽しんでほしい。
まずは鉄板の2回路DIP化したOPA627AUで全てを交換してみると、標準のTL072よりもダイナミックで力強い感じを受ける。低域〜中域の高い方かけての密度も増えた感じになる。
この強力なセッティングは限定モデルのNFJ Editionと同一である。

その他のセッティングの例をいくつかあげてみよう。
LPFはTL072、I/VをOPA627にすると、適度に華やかさとダイナミックさが増した感じに。
LPFをOPA627、I/VをTL072にすると、濃密な音質に感じた。
LPFをLM4562、I/VをOPA627にすると、解像度の高さが少し高い周波数に変化し、程度にダイナミックさが増えた。
全てをLM4562にすると、中域から高域の間の部分の表現が華やかな感じだ。
チップの向きがそれぞれ違う為、交換の際には特に注意してほしい。

総括
今までにもFX-02J+やFX-00Jなどの高音質で価格破壊系の商品群を送り出して来たが、本機は更に「とんでもない」レベルに仕上がっていた。
モバイル用に低消費電力に設計されているDAC-ICと、限られた電力の中で効果的に正負電源生成回路を使い、出力カップリングコンデンサーを排除したダイレクトカップリング構成にした事で、USBバスパワーとは思えない音質を実現しているように感じられた。価格を忘れてしまう高解像度でかつ心地良い音質は、文句無しに「買い」と言える逸品である。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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