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Labo’s View 030 FX-AUDIO- FX-Q50J

      2019/06/22

『爽やかさが好印象のフルデジタル実力機』

自由度の高い2ステージ構成のデジタルパワーアンプがリリースされた。サブウーファー出力も装備されていて、FX-AUDIO-のラインナップではデザインや品番と共に異色の存在感を放っているが、果たしてどんな音になっているのか?使いこなしの部分を含め、しっかり試聴していきたいと思う。

まず、2ステージ構成とは1チップのデジタルアンプICの仕事を2つのICに振り分けているのだが、PCM信号をDSPにて音量、音質をコントロールしてPWM信号を生成するのが「TAS5342 デジタルアンプパワーステージ」、PWM信号からスピーカーをドライブする最終増幅段として、アナログ信号に変換する部分が「TAS5508 デジタルオーディオPWMプロセッサー」という構成になっている。2つのICに分ける事で、設計の自由度(出力ch数等)が高くなるということである。
「TAS5342 デジタルアンプパワーステージ」は最大で8chの処理に対応しており、7.1chのシステムまでに対応する事を想定して設計されているが、本機ではステレオ2ch分とサブウーファーへの合成用に2chを使用している。内部のDSPは余裕あるビットデプスでクリップ等の発生は起こらない構造になっている。出力のPWM信号に変換する時のアルゴリズムにも音響的な配慮が行われており、低歪みでの変換が行われている。
「TAS5508 デジタルオーディオPWMプロセッサー」はPWM信号を高いダイナミックレンジと低歪みをキープしつつ、本機ではスピーカーをドライブする電力を2ch出力する設計で使用している。

入力はUSB/同軸/光のデジタル3系統とAUXにアナログで入力出来る。
USB入力は24bit/96kHzまで対応しており、CDのサンプリングレートの2倍の88.2kHzにも対応している。
同軸と光入力は24bit192kHzまで対応している。
どちらもDSDとサラウンドには対応していない。
AUXアナログ入力のA/Dコンバーターの動作は24bit48kHzである。

サブウーファー出力は500Hzまで出力する仕様ということで、高めの周波数のセッティングに思えたが、意外と高すぎず、使いやすいセッティングになっている。ボリュームとトーンコントロールとイコライザープリセットを通った音が出力される仕様だ。FX-501JやFX1001Jと組み合わせた場合のゲインの相性も良い。6dBのステップの間にレベルを設定したい時や、超低域だけに限定的に使いたい時は『22Hz-240Hz 可変ローパスフィルター完成基板 [ウーファーコントロールプリ]』をパワーアンプと本機の間に入れると良い。

電源投入後、爽やかでスッキリとした印象の音を聴かせてくれるが、エージングを続けて行くとより滑らかな感じになってくる。100時間を超えたあたりで変化も落ち着いて来たので、試聴に入る。電源電圧は24Vで行った。

音量レベルの帯域別の傾向であるが、全帯域でフラットな傾向なところはFX-AUDIO-のカラーである。ローエンドから低域の部分は特に不自然な盛り上がりの無い、足りないところも無い、ウエルネスなバランスでモニター的な傾向。中域はボーカルの上のほうに少し華やかな感じがあるが、ほぼフラットな雰囲気である。高域はサラッと過不足の無い感じで、ハイエンドまで素直に伸びた感じで好感触である。
音場と音像定位は良好で、センターボーカルとコーラスパートを上手く描き分ける。左右と奥行方向はキッチリ、前方と上下へはほどほど、後方は少なめである。
解像度は中域に特に良い感じで全帯域に渡って良好。実音と初期反射音、残響成分を上手く描き分けており、フルデジタルの部分の利点を活かしたチューニングになっている。

AUXのアナログ入力については、カッチリとした音質傾向で、劣化を抑えた写実感のある方向で仕上がっていおり、ステレオミニジャックの仕様を惜しく感じるぐらいである。

内蔵のトーンコントロールとイコライザープリセットは排他的では無く、BASS TREBLEと重ねて使えるところも、今まで通りで便利なところだ。
イコライザープリセットの音質変化を簡単に紹介する。
E0 = フラットセッティング
E1 = 中域と低域を僅かに上げて高域を少し下げたセッティング
E2 = 高域をかなり上げて明瞭感を出したセッティング
E3 = E2よりはターンオーバー周波数を下げたセッティング
E4 = 中高域が上がり過ぎないようにハイエンドとローエンドを上げたセッティング
E5 = 中域を下げてハイエンドとローエンドを上げたセッティング

トーンコントロールについては、BASSもTREBLEも+-7dBの範囲で可変出来る。1dBステップで調整出来るところは嬉しいが、変化量の最大幅は12dB程度あると更に嬉しい。ターンオーバー周波数はどちらも少し高めのセッティングだが、特に大きな問題は感じない。動作させた時の音質の劣化が非常に少ないので、ルームアコースティックやスピーカーシステムの補正等、積極的に使ってほしい機能だ。

DC-Input端子はセンターピンは2.5mmになっている為、2.1mm系のプラグを刺す時には変換コネクタの準備を忘れないようにしてほしい。
本機は電源電圧によって、音量が変化するタイプで音質にも変化がある。高解像度で歯切れの良い24Vも良いが、19Vで音量を上げて、若干のエキサイター感のある音質を楽しむのもアリだ。
電源には高電圧対応の限定版のリトルスージーを使うと、変化を感じられるので、持っている人には是非試して頂きたい。
PGNIIを使うとUSB入力に効果を発揮するので、是非お勧めしたい。

本機は高機能であるが、無理なくコンパクトに纏まっていて、信号経路に無駄の少ないレイアウトが音質に表れている。
電源投入時に自動でONになる仕様なので、最初の電源接続時には入力側に信号を入れておかないよう注意してほしい。

持ちやすく、操作がしやすかった。イコライザープリセットやトーンコントロールをジャンプしてダイレクトにする機能はリモコンから行う為、無くさないように注意してほしい。ボリュームの長押しでの反応はもう少し早いほうが使いやすいように感じた。

総括
押しの強いレタリングのフロントパネルがちょっと異彩を放つ本機だが、音質傾向はFX-AUDIO-的なスムーズでフラット、歪み感も少なめで解像度が高めでなかなか良い感じに仕上がっていた。多彩な入力でサブウーファー出力もあり、出力パワーもしっかりある本機は、オールラウンドに使えるお勧めの逸品である。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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