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Labo’s View 024 FX-AUDIO- DAC-M3J with B

      2019/01/05

『聴きやすいファットなサウンドの小型ヘッドフォンアンプ内蔵ハイレゾDAC』

はじめに
かなり小さなヘッドフォンアンプ内蔵DACが発売された。DAC-ICはVIA社製VT1620A、ヘッドフォンアンプICは自作キットでも好評なPhilips社製TDA1308という、消費電力を抑えつつ、高音質を狙ったモデルであるという。小型バスパワーDACのラインアウトモデルのFX-00J、01J、02Jとサイズを超えた音質を引き出してきたノウハウは、本機ではどのように活かされているのか、興味深いところである。

接続はUSBでPCに接続するだけの実にシンプルなものだ。
注意する点は、USBを接続する時にはヘッドフォンプラグを抜いておく事とPC側のドライバーでの音量を絞っておく事だ。
使い始めは少し歪みが多く、エージングの必要性を感じた。
数時間で聴感上の歪みが減りはじめ、100時間ぐらいで安定して来たので、試聴を始める。

全体的な音質傾向は少しファット方向で、神経質な感じが少なく聴きやすいセッティングになっている。
音量設定をかなり大きいほうに振っているので、接続するヘッドフォンによっては、ハイインピーダンスの低能率タイプでPC本体では音量が足りない状態が改善し、一方でローインピーダンスの高能率タイプだとボリュームコントロールが若干難しい場合も考えられる。PC本体の守備範囲外をサポート出来ないと追加する意味が薄いので、このセッティングになっているのではないかと思われる。
音量感の周波数方向での傾向は、低域はBASS BOOSTをOFFの場合は、不自然に盛り上がるところのないフラットなセッティングで、ボディサイズからギリギリの容量を出力カップリングコンデンサに使っているために、かなり超低域まで伸びている。USBバスパワーでの供給であるという事を感じさせない自然なパワー感は、NFJ&FX-AUDIO-のノウハウのように感じる。
BASS BOOSTをONにすると大きめのスネアの胴鳴りぐらいから下の周波数がグイっと持ち上がる。EDM系やEURO BEAT系はもちろん、ROCK系、METAL系などにも良い感じだ。クラシック系もソースによっては良い感じになるので、ジャンルを選ばず使えるセッティングになっていると言える。オープンエアータイプで低域の薄めなヘッドフォンの補正には特に向いている。
中域は、不自然さのないフラット傾向、高域は出過ぎないフラット傾向で聴きやすい。
レベル方向でのリニアティはUSBバスパワーである制約を感じさせないナチュラルな仕上がり。
歪み感は全帯域で少なめで、カップリングコンデンサを上手く選んでいるように思う。
音場は左右方向が少し狭いが、濃密な残響感はしっかり再生出来るので、適切に仕上げられたソースであれば、問題にならないレベルだ。
音像はややゆったりした感じで、神経質さの無い方向。
解像度は全帯域でよく頑張っていて、本機を使う意味がしっかり感じられる部分だ。
小さなボディの中で、TDA1308の音楽的な適応性を出来るだけ上手く引き出したと思われる。

本機は動作表示LEDがUSB端子の下に付いており、輝度も若干抑えている感じで、筆者は問題無く使っている。暗い部屋などで少しLEDの点滅が目立つ場合はメンディングテープで光を拡散させたり、白系のマスキングテープで輝度を落とす事で対応してほしい。
USBケーブルは程々の長さでしっかりとしたものを。長さが極小のケーブルは信号の反射の影響がホストPC側で出る場合があるので、その場合は長さを変えてみると良い。

コンパクトで整然と纏められているレイアウトで、コストを抑えつつ出来るだけ高音質を目指している。

USBノイズフィルター機構付きUSBスタビライザーのPGNを使ったところ、低域の締まり(発音から消音への納まり)が良くなり、解像度が全帯域で向上した。
本機の持つ可搬性の高さが薄まってしまうが、持っているユーザーは一度試してみてほしい。

組み合わせるPCがシルバー系の場合は、シルバーを選ぶと自然な組み合わせの感じになるが、
敢えてブラックで特別感を出すのもアリだ。

総括
試聴後に改めて感じるのは、ファットで豊かな音質感に対する「小さ過ぎる」ぐらいのボディサイズだ。聴き疲れし難い音質に仕上がっているところは、好感の持てるものだ。
PC直結では鳴らし難いヘッドフォンを持っているユーザーには、特に有効な選択肢といえる。EDM系などのダンス系もBASS BOOSTが上手くマッチしており、お買い得感はかなり高いと思われる。

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谷原 寿栄

谷原 寿栄

音楽業界で30年余年 ミックス/マスタリングエンジニア オーディオ製品開発のアドバイザー 趣味はオーディオとクルマ
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